『幸福感』 |
2004年07月24日(土)[48] |
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診察日だった。
主人格は自然と交代するものらしいが、【ひかる】のままだ。 普通は「私は女性です」と言い切る、実年齢と同じか、少し上の者が相応しいのだ。 自分の様に「性別不明」の上に「男性の可能性」が在る場合、主人格には向いて居ない。
何故、交代する「女性人格」が居ないのか。
ノートの「彼女達」の言葉から推察すると、全員『PTSD』が在るのだ。 「彼女達」は「女性で在る事」が、自分よりも苦痛なのだ。
女性に生まれた喜びを知って居るのは、11歳の少女の人格のみだ。 11歳で15歳らしく振舞う事は、不可能だと思われる。 自分が「女子」として振舞う方が、自然に見えるだろう。
薬は変わらなかった。 「恋愛の対象が女子」と言う点については、自分は誇りに思う。 相手が佐伯だからだ。
佐伯が、【ひかる】に好意を持って居る事を、光栄に思う。 長谷川が、【ひかる】を友人だと認めてくれた事を、光栄に思う。 深谷が、【ひかる】に何でも遠慮無く打ち明けてくれる事を、光栄に思う。
一美君が、【ひかる】を性別に関係無く、対等に見てくれる事を、光栄に思う。
一美君は、男女の「区別」と「差別」を理解して居るのだ。 各務君達は、【ひかる】の『心の病』を知った上で、理解しようと努力してくれて居る。
二十七日から、皆で海水浴に行く予定だ。 三泊四日で、安価な和風旅館を予約した。 今から胸躍る想いだ。
今、自分が恵まれて居るからこそ、河野真由美が気になるのだ。
一秒でも多く『幸福感』に包まれたい筈だ。 この世に「生」を受けたからには。
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